TOP > スポンサー広告 > スポンサーサイト 小説目次 indice - 箱館新撰組 > 闇に抗いて #01

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--------

闇に抗いて #01

真っ白になってしまったのなら、もう一度ここから色を塗ればいい。
もう一度、ここから色を付けていけばいい。
もう一度、ここから歩けばいい。
もう一度、ここから始めればいい。

そう言って、北の真っ青な空に消えた貴方。
あの日、確かに何かが終わり、真っ白になった。

「眩しい…」

そうして、南の空に広がるのは、白い光。
真っ白な、光。
やがて僕は、この南の空の下で始まりを迎えるだろう。
終わりを希いながら。

(土方+鉄之助)




慌ただしく行き交う人々を、どこか他人事のように見つめていた。
やらなければいけないことは山積みだというのに。
誰もが皆、母親を突然喪った赤子のように立ち竦んでいた。

「…誰か、嘘だと言ってくれ」

誰かの呟きが、胸の真中に深々と突き刺さる。
悪夢であって欲しいという愚かな願いが、痛い。
現実だと理解していながら、受け入れることを拒む心が、苦しい。
その苦痛から目を逸らすこともできずに、辛い。
けれど、俺たちはこれからもこの苦しみと痛みを抱えて生きていくのだろう。
何かが欠けてしまった心が唯一感じる、その苦しみと痛みを。
生きているのだ、と自分に言い聞かせながら。

(土方+守衛新撰組)




昼間はあんなにも騒がしかったのに。
いつの間にか、誰も居なくなった廊下。
外の景色はやがて夜に変わり、静寂が襲い来る。

「終わったよ。何もかも、全てが…」

言葉に出して初めて、あぁ、終わったのだと実感する。
そして。
君の座っていた椅子に座って。
独り、君が居ないという事実に。
そのあまりにも大きい喪失感に、声を上げて泣いた。

(大鳥×土方)




「僕は死ぬために戦っているんじゃない!」

真っ直ぐな瞳を見て、はっとした。
死ぬため?
いや、きっとそうじゃない。
あの人たちの元へ早く逝きたいと切望していたのも事実だけれど。
否定はできなけれど。
今は。

「…私は、あいつらを護りたいだけです」

忘れかけていたことを。
見失いかけていたことを、その真っ直ぐな眼差しと共に突き付けられた気がした。

「そうだ。君には慕ってくれる部下がたくさんいる」
「…えぇ」
「彼らを哀しませちゃいけないよ」

普段は見せない意思の強い表情で言うものだから。
不覚にも、胸をつかれた。

(大鳥×土方)




見送ることは、とても辛い。
でもさ、あんたが言ったから。

「お前だけは、俺を見送ってから来い」

そう言ったから。
そう願ったから。
だから、ちゃんと待ったよ。
もう、あんたにあんな辛そうな顔をさせたくなかったからさ。
だから、もうそっちに逝ってもいいよな?

(伊庭+土方)




思わず濡れた言葉が、ひどく遠い。
思わず潤んだ目頭が、ひどく熱い。
頬を濡らすものが、焼け付く喉の痛みが。
虚ろに向う脆弱な僕の心を、辛うじて現に繋ぎ止めていた。

(土方+鉄之助)




「哀しまないでください。でも…忘れないでください」

そう言って微笑った君は、僕にその温もりだけを残して背を向けた。
抱きしめた腕から消えていく、温もり。
僕は取り戻せないそれを捜し求めながら、焦燥感を残りえることも出来ずに。
生きていく。

(大鳥×土方)




こんなにもお互いを想い合っているのに。
愛し合っているのに。
近い未来に必ずやって来る、永遠の別離。
変えられぬ未来。
二人が共に歩くことは許されぬ。
なんて残酷な、悲劇的な結末。

(大鳥×土方)




何もかもが、色褪せてゆく。
鮮やかな色を、失っていく。
それでも。
ただ、空だけは変わらず蒼くて。
共に見上げた者たちは、もう誰もこの世に居ないというのに。
手の届くこのない蒼い空だけが、変わらずにそこにあった。

(守衛新撰組)




グラスに入れたのは、致死量のモルヒネ。
しかし、本当にこれを渡すべきなのか。
渡すことは正しいのか。

「先生、早くそれを」
「高松先生、これは私たちの願いだ」

躊躇する私に、彼らはそう言った。
笑みを浮かべながら。
一切の後悔などそこにはなく、いっそ晴れ晴れとした顔で。
良い人生だった、と。
武士として生き、そして、愛すべき仲間と共に死んでいくのだから、と。
それはとても幸せなことだ、と言った。

「これが、俺の誇りだ」
「これが、私の生き様だ」

胸を張って、堂々と戦い抜いた者の瞳は、最期までとても美しかった。
その日、私は。
医者として生き、医者として死ぬことを己に誓った。

(高松凌雲)




危うく聞き流すところだったよ。
いかにも君らしい、ちょっと乱暴で、少しひねくれた言葉。
いつも前向きで、諦めることを良しとしなかった君の言葉。

それは、絶望に打ちひしがれた心にも、微かな希望の光を灯すだろう。
他ならぬ、君の言葉だから。
君が残してくれた、生きるための、生かすためのおまじない。
生きて欲しいと願った君の想いは、今ならば僕たちにも届くだろう。
そして僕は、窓の外の青空を見上げて言った。

「さて、ここはひとつ、降伏と洒落込みましょうか」

その言葉に、同じく空を見上げた男たちは、君の姿を見ていたはずだ。
少し照れたように、少し皮肉げに微笑む君の姿を。

見ていてくれないか。
光溢れるその空の高みから。
僕たちが生きていることを。
僕たちが、君の言葉に生かされていることを。

(大鳥×土方)



web拍手 by FC2

*ブラウザバックでお戻りください


スポンサーサイト
2014-07-07
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。