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光を胸に抱きて #02

#02

せめて、「さようなら」くらいは言いたかった。
誰かが、そう呟いた。

「別れの言葉は必要ないさ」
「どうして?」

永訣という区切を付けられていたなら、この突然の喪失感に嘆かずに済んだかもしれないのに。
行き場のない寂寥や哀しみとぶつける先のない憎しみを持て余し、血が滲むほど強く拳を握り締める立川を見やった島田は首を横に振った。

「永訣など、ありえないからだ」

肩に付けている腕章を、そっと撫でる。
“誠”の一字を赤く染め抜いた、かけがえのないもの。
かつて、鮮血よりも赤いその旗の下に集ったあの高揚感を思い出す。
いや、あの旗の下で誰よりも気高くあった美しい人に傅く、幸福感を。

「あの人はいつだって、俺たちの傍にいた」

時に厳しい母のような深い愛情を惜しみなく与え、静かに自分たちを守ってくれていたのは誰だった?
迷ったとき、悩んだとき、立ち止まりそうになったとき、行く先を示してくれたのは誰だった?
国でも、時代でもなく、本当に命を賭けて護るべき誇りを教えてくれたのは誰だった?

「これから先だって、あの人はきっと傍にいてくれる」

鬼と恐れられた冷酷な仮面の下に、慈愛に溢れた心を持っていた人だ。
そんな優しい人が、俺たちを見捨てるはずがない。
島田はそう続け、まるで何事もなかったかのように澄み渡る空を見上げた。

「ほら、今だって…」

眼には見えない。
触れることもできない。
声を聞くことも、その背を追うこともできない。
だが、確かに此処に。

「だから、別れの言葉はいらない。今も共に、在るのだから」

此処に、居る。
確信に満ちた島田の声に、立川は。
そして、その場に泣き崩れていた隊士たちは、空を見上げた。

「俺たちは生きていくんだ。あの人と共に」

いつだって自分たちを光ある方へと誘い、導く、最愛の人。
白百合のように気高く、高潔に、最期のその瞬間まで美しく在り続けたその人の存在を、確かに。
誰もが、其処に感じた。

  取り戻せないそれを捜し求めながら、焦燥感を乗り越えることも出来ずに…
  それでも、ボクらは生きていく


(2013.02~2013.03/島田魁+立川主税)


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2014-01-16
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