TOP > スポンサー広告 > スポンサーサイト 小説目次 indice - オリジナルBL > 地上の楽園は此処に #04

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--------

地上の楽園は此処に #04

#04

この背中に、大空を羽ばたく翼はない。
だから、翼を持つ彼らの旅路を見送ることしかできない。
どうか無事に、と幸運を祈ることしか。
そうして、長い旅を終えた彼らの帰りを迎えることしかできない。
けれど、それはきっと。
翼を持たない自分が出来る数少ないことではなくて。
地上に生きる自分たちだけに与えられた特別な役目なのだ、と思う。

「だから、もしも…」

もしも、地球ではないどこか遠い惑星の彼方にまで羽ばたいて行ってしまったとしても。
何年でも、何十年でも。
この命が尽きるまで。
両足でしっかりと大地を踏みしめて。
幸運な旅路になるように祈り、いつか、疲れたその翼を癒すために帰ってくる日まで待ち続けたい。

「でも、本当は…本当は、不安だよ。怖いし、寂しい…」

突然、何の前触れもなく帰って来ないかもしれない。
彼のそんな危うさに気付いた日から、地上で見送る度に不安と恐怖に押し潰されそうになる。
ここで待つことは、翼を持たない自分に与えられた特別な役目だと頭では分かっていながら。
優越感の中に、とてつもない不安と恐怖が広がっていく。
あぁ、これが最後かもしれない。
もう、逢えないかもしれない、と。

「それでも、さようならを言う方がもっと辛いから…」

ぎこちなく笑ってみせた頬に、ぱたりと涙が伝う。

それは、彼の向日葵のような明るい笑顔しか見たことのなかった本郷にとって、初めて見る悠太の表情で。
あまりにも痛々しく、罪悪感に襲われる。

「悠太…」
「さようなら、何て…言えない」
「…言わないでくれ」

自分は、酷いことを言っているのだろう。
いっそ突き放してしまえば。
与えたものを奪ってしまえば、彼がこれ以上苦しむことはない。
傷を負うかもしれないが、その痛みは一時のものだ。
いずれは癒える。
だが、今自分が彼の手を握れば、彼は一生苦痛に耐えなければいけない。

「すまない」

不安に駆られ、恐怖に怯え、哀しみに苛まれ、眠れない夜は幾度あったのだろう。
それをこれから幾度繰り返させるのだろう。

「悠太、すまない…それでも俺は、お前を手離せない」

帰るべき場所を、ようやく見つけたんだ。
苦しげに告げられた言葉に、悠太は涙で濡れた頬に微笑を浮かべた。

「うん、手離さないで。オレは、本郷さんを想う痛みならいくらでも耐えられるから」

たとえ何億光年離れた遠い地に羽ばたいて行ってしまったとしても、オレはここでずっと待っているから。
そのために、オレは地上に生きているから。
涙を流しながら、健気なまでにいじらしいことを言う悠太を抱きしめ、本郷は翼を癒すことのできる場所を見つけた幸福を噛みしめた。
あぁ、鳥が自由でいられるのは。
翼を持ち続けることができるのは。
大地で自分たちを待つ枝があるからなのだろう、と翼を畳みながら。

  だって、ぼくはここにいるんだから、翼はいりません

(2013.10~2013.11)


web拍手 by FC2

*ブラウザバックでお戻りください


スポンサーサイト
2014-02-03
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。