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福音を齎したのは #02

#02

万年筆の調子が悪くなったとき、煙草が切れたとき、資料を探そうとしたとき。

「どうぞ」

そう言って欲していたものを手渡されたことは一度や二度ではなく、ヴィルフリートはコーヒーを運んできた岬を見つめた。
何故、今も口に出していないと言うのに自分がコーヒーを欲したことに気付いたのだろう。
自分が意識していないだけで、独り言でも呟いていたのだろうか。

「社長?どうかなさいましたか?」
「…あ、い、いや、何でもない」

こてんと首を傾げる愛らしい仕草に口許が緩み、それを隠すように手渡されたカップを口に運ぶ。
絶妙な挽き加減で淹れられたそれは激務に疲弊した身体に染み渡り、上等な豆の香りが鼻腔を擽った。
過去に、これほど完璧に自分の舌に合った味と出会ったことはあっただろうか、と思う。

「…美味い」
「それはよかったです」

ふわりと柔らかく笑む岬の頬に触れたい衝動を必死に抑え込み、鳶茶色のそれを共に飲み下す。
味も温すぎず熱すぎることもない温度も。
決してタイミングを誤ることもなく、あまりにも完璧にぴたりと重なる波長がひどく心地良く。
本能的な欲求は満たされていないというのに、手が届く距離に彼の気配があるというだけで不思議と充足感が胸に広がる。

「岬」
「はい?」
「ありがとう」
「どういたしまして」

会話のテンポも距離も。
それこそ、何もかもが、パズルのピースのようにぴたりとはまる。
そんな存在と出逢えたことに、共に在れることに、共に在ることを許してくれた岬という唯一無二の存在に感謝を。
そして、ヴィルフリートはこの日。
信じてもいない神とやらに、初めて祈りを捧げた。

  陳腐な言葉だけれど、愛する君と共に歩み続けますように、と祈らずにはいられなかった

(2012.10~2013.02)


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2013-11-09
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