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福音を齎したのは #01

#01

感情が訴えるままに動くことができるほど、子どもではない。
ましてや、それが許される自由な立場でもない。
地位だとか権力だとか、決して渇望したわけではないものに雁字搦めにされ、ひどく不自由だった。
だが、それでも俺は。
何を失ってもいいから、何を捨ててもいいから、ただただ彼が欲しかった。

「たとえば、私があなたに仕事を辞めて欲しいと言ったらどうしますか?」
「それが岬の願いならば、何の未練もない」
「多くの人を見捨てることになったとしても?」
「あぁ、迷うことも躊躇もないだろう」

正しくはない、と思う。
地位に伴う責任とそこに付随する数多の未来を投げ捨てる、と言っているのだから。
しかし、彼は困ったようでいて、どこか嬉しそうに微笑んだ。

「本当に、器用なようでいて不器用な人なんですから」

呆れも滲ませながら小さく笑う彼は、徐に白くて細い手を差し出してきた。
反射的にそれを握れば、温もりが伝わる。

「知っていましたか?どんな愛の言葉よりも、」

一旦そこで言葉を切った彼は、艶然とした微笑を浮かべて見せた。
そうして、まるで幼子に言い聞かせるようにゆっくりと続けた。

「一心に欲せられることほど、至幸なことはないんですよ」

だからもっと欲して、求めてください。
あなたが望むまま、全部あげます。
私も、あなたが欲しいから。
そう続けた彼の唇を己のそれで塞ぎ、細い身体を雁字搦めで不自由な腕で抱きしめる。
何を失っても、何を捨ててもいいとまで言い切れるほど希求する存在と愛し合うことが許された幸福感が。
何千、何万、何億の言葉を束にしても言い表わすことのできない至高の幸福感が込み上げてくる。
そうして、目には見えないそれに抱擁された気がした。

  それは、雨が大地に染み込むように優しくそれは、風が世界を包み込むように穏やかに

(2012.10~2013.02/携帯用)


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2013-07-21
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