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アモルで殺めてください

メシアも悪魔も人間も躊躇なく殺す、闇の人。
秩序、正義、法を支配した最高神。
その神の名は、Zeus。

(支配者たる存在…絶対的な君臨者…)

実の父親を王座から追放し、自らが王となったその神と並ぶに相応しい人だと思う。
闇よりも深い漆黒のスーツに身を包み、闇を従えて闇に世界で生きる、冷酷で冷徹な人。

けれど、ひとつだけ。
ひとつだけ、残酷な最高神と違うところがある。

そう。
ほら、私を見つめるその瞳。
深い深い、宙の色を宿したその瞳。
多くの神々が存在しているというあの高き空の果てにある宙の色を宿したそれは、至宝の如く美しい。
ステンドグラスのような、粛々とした神聖さを感じることがあるほどに。
そして同時に、穏やかで、ひどく優しくて。
彼のこんな表情を知っているのは、きっと私だけだろう、という優越感に満たされる。

「ラファエル、」

胸が締め付けられるほど優しい声音で私の名前を呼ぶその人から、微かな血の匂いがした。
彼のものではない、血の匂い。

あぁ、この世界でまた、誰かの命が獰猛な獣に喰われたのか。
羨ましいな、と思ってしまう。
最高神ですら従えてしまうだけの圧倒的な存在感と威圧感を纏い、鋭利な牙を剥く瞬間を、その誰かは網膜に焼付けながら死ぬことができたのだ。

(私の最期もそうであれば、どんなに幸せなことだろう…)

彼の瞳がひどく醜く、恐ろしいまでに静謐な色に染まるその瞬間。
それはきっと、壮絶に美しいに違いない。

「ラファ」

見てみたい。
私の血に濡れてもなお、気高く美しい冷酷な獣で在り続けるその美しい姿を。

いや、私はとうにそれ限りなく近いものを見ているのかもしれない。
空腹の獰猛な獣が、獲物を見つけた時のような色を宿した瞳を。
月のない漆黒の闇に支配された夜中に妖しく輝く、獣の瞳を。

「ラファエル」
「……っ、は…ん、ぅ…ぁ、」

あぁ、何て美しい。
神を蹂躙し、その手を血に濡らすことを厭わない、闇の人。
悪魔でさえも怯えるような、業深き人。
私の、愛しい人。

何人にも容赦などしない、貪欲で獰猛な、空腹の獣と化したその瞳に射抜かれる。
その鋭い眼差しは牙のように私に喰らいつき、どんなに暴れようと逃がしてはくれない。
乱暴なほどに絡み付いてくる視線が、手が、熱が。
私を内側から貪っていく。

「…余裕だな、何を考えているんだ?」
「ん、ぁ…ッ……ふ、あなたのことを…っ」

身を焦がすような快感が続く波の中で、細かく律動を変えてくる彼の首に腕を回す。

そんな、私のいつもとは違う行為に彼の宙色の瞳が微かに瞠られた。
私自身でさえ、自分の行動に内心では驚いている。
けれど、確かな理由は見つからず。
ただただ、心が彼を求めるばかりで。

「俺のことを?」
「ふ、ぁ…は…っ、あなたのことを、考えて、いるんです…」

生きるために身体が酸素を求めることと同じで、本能的な渇望にも理由はいらない。
そう自分を納得させ、便利な言い訳を手に入れた私は彼の頭を引き寄せて自ら口付けた。

「ほぅ、随分と積極的じゃないか」
「…っぁ、よ、酔っ、て…いるんです、よ…」

この、身を貪る快楽に。

「そんな可愛いことを言っていると、止められなくなるぞ」

体内でぐっと質量の増した彼に、単純ですねと笑って。
けれどすぐに、笑ってなどいられないほどの。
胸を掻き毟りたくなるほどの、激しい快感に襲われる。

「…あっ…ん、はぁ、ッ…あぁ、っ……」

生理的な涙で滲む視界に、彼だけが妙に鮮明に映る。
欲しい欲しい欲しい、とどこまでも貪欲に私を求めてくる獰猛な光を宿す瞳の中に自分を見つけた。

そして、ふと思う。
私から愛する養父を奪った憎悪すべきマフィアであるこの男を、どうして殺すことができなかったのか。
彼が私に与えた、彼を殺すチャンスはいくらでもあった。
それでも、殺せなかったのは。
殺せない、と誰かが頭の中で叫んだのは。
この偽りのない、真摯な眼差しがあまりにも美しかったからだ、と。

「…ん、ふぅ…ッ」

雨のように、口付けが落とされる。
そっと触れるだけのものもあれば、呼吸を奪われるようなものもある。
そのどれもが、愛しいと饒舌に伝えてくる。

「っあ…は…いい、ですよ」
「何がだ?」
「…あなたになら…ッ…骨ごと、たべられてしまっても…いい…」

憎むべき、マフィアの男。
同時に、愛してしまった男。

あなたは気付いていますか?
あなたの手によって堕とされたのではなく、私が自らその腕の中に堕ちたのだと。
あなたがその唇で伝えてくれるように、私はこの心の全てで想いを囁いているのだと。
愛している、と。

「あぁ、俺の天使…俺のラファエル。愛している」

蕩けるような甘い声が、耳朶を擽る。
秩序も正義も法も。
闇も光も生も死も思うがまま支配する、私のZeus。

トクリ、と一際鼓動が高鳴り、体内に感じる彼の熱に溶かされていく錯覚を受ける。
じわじわと、意識が蝕まれていく。
それは、肉食獣に捕食された獲物がゆるゆると餌になっていく様に似ているかもしれない。

(あぁ、そうか…)

だから、これほどに気持ち良いのか。
食物連鎖の頂点に立ちながら、餌となるこの感覚。
獰猛な獣の空腹を満たすことのできる、唯一の糧である私という存在。
心も肉体も、ただ繋がるだけではなく、この愛しい存在の一部となれる歓喜が、私を満たす。

もしも、生き延びるために必要となった時、私は喜んでこの肉体を彼に差し出すだろう。
血となり、肉となり、骨となり。
そうして共に生きていけるのなら、私は迷うことなくその道を選ぶ。
それが、たとえ背徳的なことだとしても。
私に、躊躇いは微塵もない。

「…ぜんぶ、たべて……」

ただひとりの、愛しい人。
獰猛で心優しい、その鋭い獣の牙を私に突き立てて。

「この、命も…愛するあなたに…」

さぁ、あなたのその愛で。
私を殺めてください。

  私を蝕んだあなたの残酷で甘美な愛が、私を喰い尽くす夜


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何だか猟奇的な思考をお持ちの奥さんですが、旦那さまがマフィアのボスなので仕方ないです(←変な言い訳するな)

アモル(amor/ラテン語)=愛
2009年4月3日耽美ちっくなものに憧れて初出/耽美に挫折した2012年10月11日再出


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2012-10-11
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